nishi.org 西和彦のコラム

西和彦のエッセイ

#12 4Kテレビは安くなった。そして売れている

2015-02-25

ずいぶん前にアゴラウェブで「4Kテレビは安くなる。そして売れる」というコラムを書いたことがる。当時1台100万円くらいしていたが、私はやがて10万円を切るだろうと予測し希望を述べた。先週オークションを見ていたら4Kテレビが投げ売りされていて10万円だった。 1年ぐらいの間に実勢価格が10分の1になったわけだ。この値段が安くなったのは大量生産のおかげではない。来たるべき4Kがそなえなればならない、HDMI2.2 HDCPという著作権保護の機能と、ハイダイナミックレンジ(HDR)がはいっていない商品だったからだ。さすがに10万円でも買わなかった。今年の年末にそういう商品が出て値段がいくらまで下がるかが、業界が予想する。来年の年末に中国・台湾・韓国製の4Kモニタの値段が10万円で何インチに興味の的になるのではないか。

2020年向けて8Kのテレビ放送が動きはじめている。オリンピックの映像は8Kと4Kのミックスになるのであろう。ライブの映像は8Kの映像になるのであろうが、2020年のオリンピックのメディアセンターは、すべての試合が8Kで記録されたデータベースコンピュータをテレビ局各社が自由にアクセスして放送番組を作るシステムになるのであろう。そうしたときに私はあえて言いたい。8Kテレビは安くなる。しかし売れない8Kが売れない理由が何か。それは8Kのディスプレイがたくさん売れない理由は、4Kテレビがきれいだからだ。私の予測は映画業界が8Kで映画をとって編集をするようになるだろう。テレビ業界も4Kで作成するよりも、ちょっと予算がかかっても8Kで制作するようになるだろう。一般の人たちは4Kのテレビでそれを観る。制作クオリティと視聴クオリティに半分の違いがある。それが世の中の流れになるのではないか。つまり、放送設備は8Kになるが、受信機は4K。

#11 10億台のDVDプレイヤーを無視した4K BDソフトは成功するか

2015-02-20

お正月のラスベガスCEショーのレポートが雑誌にたくさん載っている。なんといってもハイライトは4Kのブルーレイディスクである。ソニーとパナソニックが中心になっているコンソーシアムが4Kテレビ向けのディスクの規格を発表し、同時にパナソニックは試作品も公開した。ソニーはなにも公開していないが、Playstationk4にソフトウェアをダウンロードするだけで4K対応のプレイヤーが一気に実現するのではないか。ソニーはパナソニックの商品を発売するため仁義を通すためにただ待ってるだけでなないか。

4KのレゾリューションでHDRで色が豊かになっていいことづくめの4K BDではあるが、私は異論がある。世界に10億台あるといわれているDVDプレイヤーにこの4Kディスクはかからない。パソコンでもかからない。最近のパソコンはほどんどDVDドライブが搭載されている。4Kの映像をパソコンで見ることができない。私が言いたいことはなにか。オーディオディスクの主流は今でもCDであるが、ハイブリッドのSACDは、CDとSACDがサンドイッチになっていて、ほとんどのCDプレイヤーで再生が可能である。SACDがでたときにハイブリッドディスクの可能性をソニーミュージックの人に尋ねたら、そんな高いものはダメだと即座に否定された。当時SACDプレイヤーは非常にたかたったので、誰もSACDを買わなかった。なので、しぶしぶやむなくハイブリッドSACDが発売されたのであった。

4K BDを打ち上げた企業の幹部はわずか15年前の出来事を覚えておられるのであろうか。今年の年末に発売される4K BDは、4K BDプレイヤーにしかかからない商品である。それならば、私はほとんど売れないのではないかと思う。PS4がプレイヤーになるからいいではないか、という話もあるが、すべてのDVDプレイヤーやすべてのパソコンは、4Kの映像から置いてけぼりになるのである。4K BDハイブリッドディスクを作るのがよいのではないかと思う。通常のBDのプロセスに厚さ半分のディスクを作り、DVDのと張り合わせればよいのだと思う。DVDが要求する反射率は満たさないかもしれないが、ほとんどのDVDプレイヤーなら読めるのであろう。

DVDを発明したのが東芝で、ソニーはその時の経緯があるので、ブルーレイとDVDのハイブリッドをつくらなかったのであろう。ユーザの利便性よりも企業のプライドが優先しているのである。

DVDや2Kの映像をアップスケーリングして4Kにして楽しむことと、4Kの映像を表示するという2つの理由で4Kテレビは売れている。この4Kテレビに4Kしか再生できないプレイヤーをいくら安いとはいっても4Kしかはいっていないディスクを買えというよりも、ハイブリッドの4Kディスクを提供する方が理にかなっていると思うのは私だけであろうか。もっともハイブリッドディスクを作るよりパッケージの中にDVDと4K BDを同梱する方がコスト的に安いかもしれない。

日本ビクターでVHSを作った高野氏は、ソフトウェアの互換性ということを一番大切な原理原則としてVHSのソフトの互換性を追求された方であったが、ソニーのβマックスは、ソフトの互換性はことごとく無視した。昔のβマックスを使っているお客のことなど、どーでもよかったのである。だから東芝の作ったDVDプレイヤーなんかどうでもよくて「 Playstation4にアプリをダウンロードしたら、4K BDがかかるモン」というソニーの高笑いが聞こえる気がする。

#10 59歳の誕生日を迎えて

2015-02-12

この2月10日で59歳になった。還暦まであと1年である。このウェブサイトをリニューアルするために自分の経歴や業績をまとめている。3月末には大学評価のための研究業績書を提出しなければならないから、ちょうどよい機会である。自分の人生を振り返って、どうも人生は15年で転換してきたことに気がついた。

15歳までは普通の生徒であった。わんぱく小僧である。15歳になって自分はモノを作りたいという気持ちがとても強いということがわかった。30歳までの15年間の大きなテーマは、コンピュータを作るということであった。そのためのソフトウェア、そのためのネットワーク、そのための半導体、の開発に関わった。

30歳になって、日本に戻ってきて会社の経営に取り組んだ。30〜45歳までの15年間で、会社を上場させ、バブルを体験し、リストラを体験し、最後に会社は人手に渡ってしまった。お金持ちの会社に経営してもらうことによって、会社が永遠に存続する選択をしたのだった。

45歳のときに大学の教員と中学高校の管理者になることを選んだ。この14年間に教員として教育と研究、管理者として新しい中高一貫教育のあるべき姿を模索してきた。それらも一段落ついて私は60歳を迎えようとしている。

60歳からの人生の次の区切りはおそらく75歳であろう。幸いこれまで大病もなくやってこれたので、日本人の平均年齢を考えるとあと15年は生きていけるであろう。さて問題は、これからの15年で何をやるのかということである。オプションは色々ある。

まず、来る4月から大学の管理者の末席(学科長)に連なることになったので、このキャリアをどうすすめていくのか、ということが考えられる。次にまだ積み残しの研究テーマがたくさんあってその研究を続けたいという気持ちもある。

高級オーディオのビジネスをやっているが、これをちゃんと立ち上げたいという気持ちもある。

出版と電子出版についてもしっかり取り組んでみたい。

自分の専門はメディアとかビジネスであるが、それ以外に歴史研究を進めてきた。日本古代史、日本戦国史、フランス革命史研究なのである。これらの分野についても研究の成果を本にまとめたいと考えている。

この前、ビル・ゲイツに会ったら彼が「頭がシャープなのはお互いあと10年くらいだから、時間を大切にしなければな」と言っていたのを聞いて少しびっくりした。あと10年はしっかりはたらいて、頭がボケてきたらのんびりしようかと思った。それとも、頭がはっきりしている今からのんびりするのもいいかもしれない。結論をだすのにまだ1年はある。のんびり考えよう。

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