nishi.org 西和彦のコラム

通信・放送・インターネット

#107 IoTのキラーアプリは何か

2017-05-10

東京ビックサイトでIoTの展示会があっていってきた。景品をやるからアンケートに答えよというキャッチセールスがやたらに多かった。展示会のありようも変わったものだ。およそ考えることのできる応用例はほとんど実現していて、商品になっている。大学の取り組まなければならないテーマを全面的にやり直さなくてはならない、と思った。同時に動いているのはわかるけどこれでは大量市場を構築することはできないのではないかと思われる商品が多かった。この世の中で1セットしか存在しないカスタム商品が多かった。

IoTに今求められているのは、IoTならではの大型商品なのではないか。パソコンでいうならば表計算やDTP、インターネットのブラウザ。スマホというパソコンを超える大型商品や検索エンジンや、クラウドというリモートデータベースやアプリケーションのようなものである。万物がインターネットに繋がることによって我々の生活がどう便利になって万人が買う商品は何なのか、それを作った企業がIoTのチャンピオンになるのであろう。パソコンが素晴らしかったのは標準的な仕様のマシンをソフトウェアでプログラムすることによって色々な用途に応用することができたことである。初期のBASIC言語はパソコンの応用開発のツールとして活用されたと思う。そのうちに表計算やDTPなどのキラーアプリが出てきた。IoTは今BASICがパソコンに出現する以前の段階ではないだろうか。

シリコンバレーだけではなく、ぜひ日本からそういう企業が出て欲しいものだ。

#105 インターネット時代の機械翻訳に再びチャレンジしてみたい

2017-05-02

機械翻訳は20年ぐらい前からやっている。しかし、やってもやっても成果がでない。永遠の研究テーマかもしれないといわれてきた。文章を解析して意味を抽出するときに曖昧さがかならず残るからである。しかし、いったんプログラムが文章の意味を正確に把握すればそれを目的とする言語に翻訳することはほぼできるようになった。

高校時代にエスペラントという言葉を学んだことがある。世界中の人々が共通語を使うようになればどんなに便利だろうと思ったのである。一生懸命エスペラント語の文法や単語を覚えたがあとになってすでに米語が世界の共通語になっていたと気がついて嬉しいやら悲しいやら微妙な気持ちになった。国際連合大学の高等研究所で国連の公用語をサポートする機械翻訳システムを作ろうと10年ぐらい努力した。30か国以上の研究者と知り合いいろいろな活動を行ったが結果はあまり華々しくなかった。はやり国連で一番使われている言葉は英語であった。関係者は皆英語を話すのである。建前をサポートするためのシステムではなく、本音で使えるシステムを開発しないといけないということを学んだ。

この度の研究は第一段階として電子書籍を各国の言葉に翻訳するシステムの開発。第二段階をウェブの内容をマルチ言語対応するということをやってみたいと思っている。スマホがこんなに世界的に普及し、地球の人口の約半分の30億台のスマホによって、インターネットにアクセスはこんなにも簡単になった。しかし地球の上には100弱の異なった言葉がある。自分の国の言葉しか話せない人も多い。多くの人がインターネットにアクセスできるように今、問題は言葉の違いである。ある言葉が読めないとその言葉でかかれた知識は理解不能である。インターネットで使うことができる機械翻訳は不正確なものが多い。ここのところを解決して世界中で知識の共有が可能になるようなシステムを作ってみたい。

#104 ユビキタスコンピューティングとIoTの違い 私論

2017-05-02

何年か前、ユビキタスコンピューティングという言葉が流行った。世界的にもてはやされた概念であったが、今はIoTに変わったような雰囲気だ。

ユビキタスコンピューティングはあちらにもこちらにもコンピュータが存在し、それらがネットワークで結合して動くというイメージであった。そのことについて誰も反対はしなかったし、不可能だとは思わなかったが、実際にそういうことはあまり起きなかったような感じがする。しかし、IoTがユビキタスと一番変わっているところは「クラウド」という概念が入ってきてIoTの機器がインターネットを通じてクラウドとデータをやりとりし、そのクラウドのデータを元にしてAI的なソフトが動いて、その結果がまたインターネットを通じてIoT機器やその他のIoT機器に作用するというのが最近のIoTの流れのような気がする。しかし、IoT機器は千差万別、クラウドのAPIも千差万別であり、シングルベンダーがソリューションを提供することができるのは例外といってもいい。あらゆるレイヤーでマルチベンダーのIoTシステムを現在の動いている情報システムと共存させながら発達させていくには何が必要かということが求められている。業界の人たちの標準化の活動の効果がどれぐらいあるのかも興味深い。

#96 IoTとセキュリティ

2017-03-07

インターネットの次の焦点はIoTである。モノが繋がるインターネットのことである。私はIoTを最近の研究のテーマとして選んでいろいろな開発を展開しているが、その中で一番重要と考えることについて述べたいと思う。

インターネットを経由して機械や生産ラインやクルマや建築物に対してコントロールすることができるようになっているのがIoTであるが、このインターネット同士の結合のセキュリティが今問われている。つまり、インターネット上の暗号化は、アメリカの政府が定めた暗号が使われている。アメリカの政府が定めた暗号というのは政府が持っているマスターキーを使えば一瞬にして解けるというものである。この暗号化スキームを使って例えば、原子炉の制御システムを構築すると、アメリカ政府に敵対する国や組織であれば政府が介入してそういうプロセスを止めることができる。日本の産業用システムの中にはすでにたくさんのアメリカが仕掛けたリモコン爆弾が組み込まれているとスノーデンは言っていた。飛行中の航空機は墜落するだろう。稼働中の発電所は暴走するだろう。だからインターネット経由で産業システム、軍事システムを構築するときには相当な対策が必要になる。日本国内のシステムであれば、それこそ絶対に解けないNTTの暗号を使った最強のシステムが必要となろう。それでも足りないかもしれない。また、中国やロシアとアメリカとの戦いは単にインターネットを使ったホームページのハッキングなどという代物ではなく、インターネットを使った社会システムの撹乱というのが、その主たる脅威となるのではないか。

インターネットと繋がるIoTデバイスのコントローラの9割以上はこのセキュリティに費やされなければならないのではないか。単なる8ビットのコンピュータでは足りないことは明白である。ARMの64ビットのCPUが内蔵されたコントローラが適当である。孫さんはこのことを考えてARMを買収したのかもしれない。

#89 音楽と映像の配信の未来

2016-10-27

Spotifyの日本のサービスがいよいよはじまる。4年前にSpotifyが始まったときから日本でいつ始まるからワクワクドキドキしながら待っていた。個人的にはNaxosのオンラインサービスの方が好きだった。しかしSpotifyの方が圧倒的な曲の多さと低価格でおそらく日本のマーケットは一瞬にして市場を取られてしまうのである。これで困るのはCDを出している音楽出版社と言われているが、そうとも言えないと思っている。音声圧縮がかかった音楽は1万Hz以上の高音と100Hz以下の低音が含まれていない。高音と低音も含めて音楽を聞きたいという人は依然としてCDを買い続ける。問題はこのCDを買い続ける人が何割になるかということ。それは全体の1割だろう。よって世界の音楽はほとんどすべてがインターネットオンラインになる。ならない部分の音楽がパッケージメディアで供給されることになるだろう。

映像については最近、総務省が2019年をめどにテレビがインターネットで視聴できるようにするという予定であると発表があった。NHKがインターネット課金するためにも必要なことである。NHKも民法TVもインターネットを通した情報提供を避けてきた。これは戦略的に正しかったのか、こうすることでテレビの視聴者の数がこの10年間でどんどん減ってきているのではないか。そういう生活習慣を日本国民に植えつけてしまったのはそういうテレビ局の嫌インターネット政策のせいだったのではないだろうか。今の日本人にはインターネットでテレビをみるということはよほどのことがない限り、ありえない。その数少ないインターネットでテレビを見る方法とは、自宅のHDDレコーダーにLocationFree TVを繋ぐことだ。個人の責任で、自宅で自分の機器で番組を録画しその機器からテレビを再生してインターネットのLocationFree TVで中継をする。そういうことがでしか、ネットでテレビをみることができない。このサービスを一般の人に提供しようとした人は、全員が有罪になっている。そんな怖いことは企業は誰もしなくなってしまった。今回の総務省の判断はこのインターネット経由のテレビ視聴をオープンにすることであり画期的なことである。これがどうなるか期待したい。

しかし、今のインターネットの回線容量を考えると、2KのHDTVの映像では苦しいのではないか。4KのUHDTVなどは絶対に不可能である。とすれば、おそらくインターネットの映像は1K×500 のHDTVの4分の1になるのではないかと思う。まともな色のでない1Kの映像でユーザは我慢するべきなのか。ここに2Kのブルーレイや4Kのブルーレイが引き続き売れるという市場がでてくることになる。つまり、ロークオリティはインターネットのダウンロードやストリーミング、ハイクオリティはインターネットではなく、パッケージメディアでの販売というのがどうもここ数年間の市場の動きになるのではないかと考えている。

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