nishi.org 西和彦のコラム

西和彦のエッセイ

#4 パソコンはスマホに負けたか!?

2014-11-26

去年の年末にWebのアクセス分析を見ていて、アクセスの50%以上がスマートフォンになった瞬間を目撃した。それからこの1年パソコンとスマホの綱引きがいたるところで スマホの勝ちになり、この年末にパソコンはスマホに負けたことになる。しかしそれはあくまでも数においてであって、パソコンにはパソコンの役目が、スマホにはスマホの役目がある。パソコンは情報を作る道具である。スマホは情報をアクセスし消費する道具である。このスマホの情報消費装置が情報生産装置になったときがパソコンの終わるときであるだろう。スマホを使って小説を書いている世代がはじまっている。大学の卒論をスマホで書くのは時間の問題であろう。スマホに必ずついているカメラで写真を撮ってアップすることが当たり前になって、検索結果は文字よりも写真で探す方が便利である。

Chrome CastやApple TV、Amazon TV、などのようなテレビのHDMIに差し込むビデオスティックも各社お客の囲い込みのために安く発売している。パソコンのスクリーンを無線HDMIケーブル的にテレビに表示するものもあるが、インターネットに繋がった完全なスタンドアロンコンピュータ的な性格を持ったものも増えてきた。これにクラウドベースのアプリケーションが載れば、100ドル以下のホームコンピュータである。私がずっと欲しかったホームコンピュータはセットトップでもセットダウンでもなく、HDMIスティックだったのだ。

パソコンはスマホに負け、次にHDMIスティックの繋がったテレビに負けるであろう。しかしハードウェアとしてのスマホやデジタルテレビに負けたのではなく、パソコンの機能がクラウドに移行したというのがシステム全体を見たときの状況であろう。スマホやデジタルテレビが受信機としてだけでなく、送信機としてのアプリが盛んに使われるようになったとき世の中はクラウドとパソコンとスマホとタブレットとデジタルテレビがぶら下がった送受対称のメディアシステムが私の考える未来である。

#3 ハイレゾオーディオと4Kビデオは、レコードとフィルムになれるか

2014-11-19

最近エジソンが発明した円筒式蓄音機を聞く機会があった。ゼンマイ式で、とてもきれいな音であった。持っている人に聞いたところによると、音声ピックアップにも何種類かグレードがあって、さらにもっといい音にもなるということであった。20世紀初頭の商品として十分なクオリティを持っていたが、円盤式レコードの生産性が勝ってエジソンしきプレイヤーは負けたのである。20世紀初頭といれば同じ頃フィルムが発明され、映画が生まれた。音楽遺産、映像遺産としてレコードとフィルムは約80年も現役で生き続けてきたわけである。それが、デジタルに変わりつつある。それではいったいレコードやフィルムのように人の人生よりも長いあいだ続くフォーマットとしてどういうデジタルが勝ち残っていくのであろうか。

オーディオについてはハイレゾが立ち上がりつつあるが、16ビット、24ビット、32ビットのどちらかで、44、88、176、352kHzのどちらかなのであろう。私は32ビット352kHzがプロのフォーマットになると期待する。最近DSDが流行になっているが、ライブを録音した高速のDSDは確かにいいが、PCMに変換しないと処理できないDSDの未来に疑問を感じる。

ビデオについてはプロが使うデジタルフィルム的なスペックは4Kであるといわれてきたが、どうも違うようだ。2Kの次は4Kではなく8Kの映像制作編集が標準になりそうだ。16Kのテレビというのはまだ聞かない。4Kは2014年11月の展示会で標準としての地位を不動のものにした。どうせこれから投資をするなら、少なくとも5年は持つ8Kにしようというのが放送局の人であれば考えることであろう。

32ビット352kHzオーディオで8Kビデオ(8-8-8)というのがこれからの映像システムのスタンダードになって少なくとも2050年まではこれでいってくれたらいいと思う。

すると次の課題はなにだろう。私は次の課題は2つあって、1つ目がサラウンド、2つ目が映像圧縮方式の見直しであると思う。

映画と音楽、両方に使えるサラウンドであると思う。8Kが22.2チャンネル使うといっているが、7.1や11.1チャンネルでいいという人がある。スピーカーの数を多くしてリアルな音場を再現しようというのは良い考えであるが、現実的には疑問を感じる。それを解決するために論理モデルと物理モデルの考え方を導入したのがドルビー研究所のDolby Atmosである。Dolby Atmosは128個までのロジカルサウンドオブジェクトをそれぞれのシアター別にフィジカルスピーカーに演算マッピングするというシステムである。素晴らしすぎて、なんとも言えないがもはや次世代サラウンド議論を先送りできるご時世ではなくなったことは確かである。ちなみに私は左右2チャンネルオーディオに、天井の高さを与える4チャンネル天井サラウンドの6チャンネルオーディオシステムが欲しい。

2K用のH.264進化させた4K用にH.265(HEVC)コーディングが標準になっているが、これに疑問を感じる。さらに高圧縮のために画質が犠牲になっている。

H.265の動きも色も4Kにはふさわしくないと思うのだが。8Kの圧縮を決めるときにこのような失敗を繰り返してはいけない。プロ用の永久にデジタルで保存するフォーマットが求められている。機種を問わないRAWのフォーマットである。

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