nishi.org 西和彦のコラム

西和彦のエッセイ

#36 60からの趣味

2015-09-17

来年の2月で還暦を迎える。つまり60歳になるのだ。目の前の差し迫った課題として、15年ごとの転職のことがある。30でアスキーの社長になり、45で大学教授になった。60からの仕事のことは何も決まっていないが、60から本気で取り組む個人的な趣味を新しくはじめることにした。それはヴァイオリン作りである。年を明けたらイタリアのヴァイオリン製造学校に入学してヴァイオリンの作り方を学ぶことになった。ヴァイオリン製造には修士とか博士とかはなく、入門した親方が「もういいよ」と言ってくれるまで勉強しなければならない。自分でどれだけできるかわからないが、やってみようと思う。楽器も今からスタートするのは遅すぎるかもしれないが、ヴァイオリンを作りながら、チェロかコントラバスをはじめてみようかと思う。

東京大学教授であった糸川英夫博士は日本のロケットの父と言われている。その糸川博士がロケットとともに研究をされていたのがヴァイオリンである。糸川式のヴァイオリンを開発されて、CDも出ている。普通のヴァイオリンのG線の裏にあるバスバー(低音支え板)だけではなく、E線の裏にあるハイバー(高音支え板)を付けてその分の重さを他の部品を削って軽くしてその分の重さを補償してヴァイオリンであると糸川先生の著書に書いてあった。そのヴァイオリンを演奏された、ヴァイオリニスト中澤きみ子さんのCDも聴いた。たしかにE線で発音する音が強調されていて魅力的な音がしていた。私は今までの伝統的なヴァイオリン作りを否定しないで、私なりの改造を実現させて私のヴァイオリンを作ってみたいと思う。ヒントはいくつかもうすでにあって、私はハイバーは使わないで、違う方法を使いたいと思う。また、ヴァイオリンの上板を改造してやってみたいと考えている。今までのスピーカーの製作の経験、スタインウェイのグランドピアノを分解した経験を生かしたい。

先日イタリアのミラノからクルマで1時間の町、クレモナに行った。クレモナのヴァイオリン博物館に行ってヴァイオリンの展示と本をたくさん買ってきた。11月には新作ヴァイオリンの展示会があるのでそれにも行こうと思う。1600年くらいからイタリアのクレモナで生まれた楽器であるヴァイオリンはその生まれた町、クレモナとは切っても切れない関係のような気がする。ヴァイオリンを作りながら同時にヴァイオリンの歴史も学びたいと思う。現在ではヴァイオリンはイタリアだけでなく、フランスやイギリス、アメリカ、中国でも作られている。世界に存在する音のなるヴァイオリンは約100万丁。そのうち最高のヴァイオリンと言われているストラディバリウスが約500丁、中国のヴァイオリンは1713年のストラディバリウスのコピーと言われているが、70万丁存在すると言われている。方やスタラディバリウスは10億円、中国のストラディバリウスのコピーは1万円だそうだ。この現実をどう捉えて、理解すればよいのかということも自分の大きなテーマにしていきたいと思っている。

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