nishi.org 西和彦のコラム

西和彦のエッセイ

#43 テロの私的な分析 その2

2015-11-21

チベットのダライ・ラマ法王が
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人々は平和を欲しているが、テロリストは近視眼的であり、それ故に彼らは自爆テロを行う。我々は、祈るだけではこの問題は解決できない。私は仏教徒であり、信仰を信じている。問題を作り出したのは人間なのにも関わらず、問題の解決を神に委ねることは論理的なこととは言えない。神ならばこういうかもしれない「問題を作り出したのは人間なのだから、自分たちで解決しなさい」と。

我々は、人間性と協調心を育て上げるためにシステマチックなアプローチを取る必要がある。今からこれらを始めるならば今世紀は前の世紀とは異なるものとなるだろう。それを始めるかどうかは、全ての人々、一人一人の考え方にかかっている。それを成すためには、神や政府に頼るのではなく家族や社会のなかから平和のために働くことを行うべきである。
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と、言われた。私はこの発言に対して感動した。同時に自分はどうしたらよいのか、社会はどうしなければならないのかを考えてみた。この分野の専門家でない私の考えることなんてなんの値打ちもないかもしれないが、表明したい。

ネットの記事を読んでみると、テロを実行している人は純粋な人らしい。イスラムに対するひどい扱い、自分たちの受けた不当な仕打ちが怒りとなってそういう行動に出るのだそうだ。ウイグルの焼身自殺にも共通したものがある。ウイグルの場合は無言の抵抗ということで自殺をする。イスラムの場合は他者を巻き添えにしている。ほんとうにひどいことを考えている人は自分自らがテロをやることはないのではないか。純粋な人を先導してその人たちにテロをさせるように仕向けているのではないか。オウムのときもそうだった。911もそうだった。悪者はうしろに隠れている。

テロリストたちの生まれや生い立ちにおいて彼らは自分の生きている社会に喜んで受け入れられてきたのだろうか。イスラムだからとか、アラブ系だからとかといって差別されてこなかっただろうか。シリアの難民を受け入れるといったドイツに着いたときにそこには自分のいる場所がなく、シリアに送り返された人が受ける心の傷を考えるととても悲しい気持ちになる。私は日本が難民を受け入れることが可能かどうかを決める立場でもないし権限もないが、それぞれの人が平和な生活ができる場所をつくる努力をそれぞれの国がしなくてはならないのではないか。ただ単にアラブ系を受け入れて迫害を続けるとその人は居場所がなくなる。そういう風に追い込まれた人がテロに走る原因になるのではないかと想像した。実際に現場を知らない自分が勝手にそういうことをいうのは僭越ではあるが。パリにも助けを必要とする老人や老女がいる。この人たちの介護をするような仕事を移民の人たちに開くことをフランスの政府はしているのか。自分が日々手伝って感謝されて仕事をしている人たちとの人間関係がもし存在するならば、そういう人たちに対してテロ行為を行うであろうか。移民の人たちにも平和に生活をすることができる社会的な居場所を提供するという政策も求められているのではないか。表面的な物資の援助や平和維持活動だけではこの問題は解決しない。移民に対する人間的な対応、これは決して人道的という言葉であらわすことでなく、なぜなら今まで国連などでそういうことが語られたことを私は不勉強なので知らない。安全保障理事会は非難決議ばかりしている。今求められているのはテロの原因の正確な究明ではないだろうか。

それをしっかり行うことがダライ・ラマの言われた「人ができること」であるのではないかと思った。

#42 テロの私的な分析 その1

2015-11-21

11月21日からパリで仕事の予定があったのだが、キャンセルになった。会議のホストが危なっかしくて3月に延期すると通知があったからだ。パリのあとイタリアのクレモナに行ってヴァイオリン学校に入学の手続きにいくところだったのに。

パリのテロでお亡くなりになった方々に心から哀悼の意を表したいと思う。

最近海外のニュースをよく見るのでテロのことを少し考えてみたい。ISのテロは西洋諸国のアクションに対応して起こっているようだ。ロシアのシリアに対する爆撃に対してロシア航空機の爆破。フランスのシリアに対する爆撃に対してパリのテロ。こうなれば次は米国の爆撃に対して米国関係の何かがやられるのは時間の問題なのではないか。

最近の中国に関して思うことが2つある。中国とアメリカ、中国とイギリスのことである。

中国がAIIBを作ることでアメリカと対立した。日本はアメリカに同調し参加しなかった。日本の世論でAIIBに賛成した人たちの論調をしっかり記録しておこう。イギリスがAIIBに賛成して参加した。それについても考えたことがある。

次に中国が南沙諸島を埋め立てて軍事基地を作っている。アメリカは怒って駆逐艦を派遣し公海であるというデモを行った。この問題はこれからもっともっと大きくなるだろう。戦争の目的は2つあると言われている。一つは領土の奪い合い。もう一つは国民の殺し合い。南沙諸島のケースは領土の奪い合いに該当する。私が心から願うのは南沙諸島の問題に自衛隊を派遣することが起こらないことである。日米関係があるから仕方なく自衛隊を派遣するというシナリオを私は警戒する。

一方、中国と英国については、その両国の歴史を深く考えないと英国の考えていることがつかめないと思う。英国の軍艦の空砲数発によって清王朝は英国の属国になった。そのあと日本が中国を奪ってしまった。植民地政策、植民地経営で実績のあった英国の手口は鮮やかなものがある。一方、日本はお人好しのおめでたい国家ではないか。

AIIBに土壇場で参加を決め、習近平国家主席を国賓として英国に招待をするという報道をみたときに私は第二次世界大戦前に時の首相 チャンバレンがヒットラーをよいしょしたことを思い出す。詳しくはインターネットで調べればいくらでもでてくるので書かないが、イギリスの今の内閣は中国を意図的に褒めて調子に乗らせて実利を採る。ということを考えているのではないか、という大英帝国のシタタカさを感じた。やはりスペイン ポルトガルのあと世界中を支配した国の歴史的な大局観のなせる技かと。

アメリカ イギリス以外の国はどうか。ドイツのここしばらくの動きを見ていると、ドイツと中国とは仲がよかった感じがする。アメリカは当然不愉快だったろう。私はフォルクスワーゲンの偽装事件はドイツに対するアメリカの警告と考えてもよいのではないかと思う。陰謀論と一笑にされると思うが何か大きな事件には大きな作用反作用の因果律が存在していると考えている。こういうのが国際政治の世界なのであろう。

日本はどうか。ほとんど何もしないで、何をされても無反応で、難民も受け入れず、国際活動に関する協力金のバラマキばっかりして、本当にダメな国だという人もあるが、こういう日本の態度は賢い選択かもしれない。

宮沢賢治の詩に「雨ニモマケズ」というのがある。

雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫なからだをもち
慾はなく
決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを
自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かり
そして忘れず

野原の松の林の陰の小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば 行って看病してやり
西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろといい

日照りの時は涙を流し
寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものにわたしはなりたい

少し長くなってしまったが、宮沢賢治のいうようなことを日本は世界にしようとしているなら、それはそれでよいのではないかと思った。

#41 日本中が市内通話に

2015-11-10

NTTが有線電話をすべてネット電話にするという、発表があった。ずいぶん昔に電話の未来ということで、シャープペンシルのような携帯電話で世界中を旅行して、価格は市内通話と同じが私の夢である。と書いたことがある。そのことが全部実現しそうになっている。感無量である。しかし私はこの際違うお願いをしたい。

ADSLでも光でもいいから各家庭にインターネットの線を引いて、その先に電話とWi-Fiのアンテナをつけて欲しいのである。Wi-Fiは暗号化するけど誰でもアクセスできるようにしてほしい。無線のホームセルを可能にしてほしいのだ。そうすることによって固定料金だけいかしてWi-Fiの利用は自分がWi-Fiを持っている限りほかでも無料にしてほしい。

ほとんどの人はもはや電話でダイヤルはしない。昔私は300件くらいの電話番号を覚えていたが、今は自分の家の番号も忘れてしまった。覚えているのはわずかに110と119である。家にある電話機はかかってくるためのもので自分ではかけない。家の中で家人を呼ぶ時にケータイから家にかけたりする。そのような使い方しかないのだ。NTTがアナログ電話を安くすると言っても、それをうれしいという人はいないのではないか。たとえ長距離が安くなっても。

知らない土地にいってWi-Fiサーチをかけて、たくさんルーターの名前がでるたびに、このルーターに少しでもつながしてもらえればいいのにと毎回思う。でもそれは叶わぬ夢。NTTにはぜひこのことを解決して日本全体がWi-Fiのマイクロセルでカバーされるような施作をお願いしたいものだ。

#40 ビル・ゲイツ60歳の誕生パーティー

2015-11-03

10月の末にビル・ゲイツの誕生パーティーがあって、シアトルにいってきた。場所はビル・ゲイツの自宅の大ホールだった。写真はたくさん撮ったが公表すると「次は呼ばない」と言われそうなので、写真は公表できない。招かれた人はビルのお父さん、お姉さん、妹をはじめとする家族。ウォーレン・バフェットを筆頭とする財界の大物、ジェフ・ベゾスもいた。ところが50歳の誕生日から変わったことがあった。ポール・アレンがいない。スティーブ・バルマーがいない。昔のマイクロソフトを支えた巨人たちが一人もいなかった。とてもびっくり。反対に今のマイクロソフトの大幹部は全員集合していた。もちろんゲイツ財団の大幹部も勢ぞろいしていた。そこで私は次のように思った。ビル・ゲイツは過去のマイクロソフトと決別して、新しい社長の率いる新しいマイクロソフトと本気で仕事をしようとしているのではないか。表面的にはCEOから引退したと言われているが、引退した創業者の元に創業仲間が一人もいず現役の大幹部勢ぞろいの誕生パーティーなんてあるだろうか。これなかった人がビデオで言い訳を述べているのが、傑作だった。ホワイトハウスの人、フェイスブックの人(お金出してもらっているからね)、有名なベンチャーキャピタリストなどなど、このビデオが上映されたときにみんなで大笑いをした。僕が欠席してもビデオを送れとはこないかもしれない。

話は変わって天皇とその取り巻きの皇族、華族、貴族との関係は、天皇との血の濃さ、天皇との距離感で決まるという。会場の端の席で眺めていて、着席の席順は綿密に考えらえた素晴らしい配列であったことを発見した。ビル・ゲイツの奥さんのメリンダに「素晴らしい着席順でした」と言ったら、「大変だったのよ。喜んでくれて嬉しい。」と言っていた。

アマゾンの社長のジェフ・ベゾス氏に会った。ベゾスが開口一番に言ったことは「おまえはビルの友達か?」「そうだ」と答えると、「俺はビル・ゲイツの友達で、お前はビル・ゲイツの友達だから、友達の友達は友達だ」と言った。私はこの言葉でベゾスが一発で好きになってしまった。

ビル・メリンダ・ゲイツ財団の理事長を7年間務めたジェフ・レイクス氏に会った。久しぶりに話をしていると、彼は、僕が1981年にしたスピーチの内容を覚えていて、「たしかお前はこんなことを言ってたぞ」と披露してくれた。なんでそんなことまで覚えているの?」と聞いたら「その日は自分がマイクロソフトに入社した日だったから」だそうだ。レイクス氏はマイクロソフトでOfficeというソフト群を束ねた企画者である。僕は彼のスピーチを大して気をつけていなかったのでなにか彼に関係することはないかと、一生懸命思い出して、レイクス氏の奥さんの結婚前の苗字を言った。たまたま覚えていたからだ。そしたら奥さんがすごく驚いていた。レイクス氏に「お前うちの奥さんに気があったのか」、と聞かれたが、「その時俺は結婚していたのよ」と言っておいた。

30年前に喧嘩してマイクロソフトを辞めた僕を忘れずにずーっと誕生日のパーティーなどに呼んでくれるビル・ゲイツに感謝したいと思う。喧嘩早く人と仲直りしたことのない僕に人と仲直りをするということの大切さを教えてくれたのは彼である。

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