西和彦のエッセイ
#81 北方領土二島返還のシナリオ私案
2016-08-30日本の領土問題は大きく分けると3つある。最近話題になっている尖閣諸島、中国との紛争。竹島、韓国との紛争。それと北方四島、ロシアとの紛争。この3つの中で一番大きな規模は何と言っても北方四島であろう。この北方四島については歴史的に多くの政治家が取り組んできて、未だに解決にはいたっていない。これを解決するシナリオを考えてみた。私は国際関係の専門家ではないので、現状の二国間交渉については全く承知しないが、お金をたくさん出して島を買うという発想はどんなにお金が欲しくてもロシアは納得しないであろう。北方四島の実効支配のために軍隊をつかって占領するということは馬鹿げている。行き着くところは限定核戦争になるであろう。返還を叫ぶだけとか、お金で買うとかいうシナリオ以外の創造的な解決方法が求められている。つまり外務省の解決では無理で、経済産業省の解決でも無理で、総理大臣の大きな政治的な判断と決心がないと実現は不可能であろう。
ロシアの状況、まず、石油価格が下がったことによりドル資金が欠乏している。二つ目が、クリミア半島の紛争で国際社会から経済的に制裁を受けている。この状況においてロシアはお金を欲しくてたまらないのではあるが、北方四島をお金で買うことはできない。大国としてのロシアのプライドが許せないからだ。私の提案は以下のようなものである。
四島のうち広い土地の国後島と択捉島をフリーゾーンに指定して、そこで大幅な規制緩和を行いロシアと日本で経済協力を行うことはどうであろうか。つまり、まず国後島に工業団地を作って、多くの日本企業を誘致し、フリーゾーンでは、パテントフリーゾーンも作ってロシアの所有している特許と日本の特許を自由に使うことができ、商品を作って、作った商品をロシアと日本に輸出を解禁するというプログラムを立ち上げるのはどうであろうか。 国後島は主に日本企業がフリーゾーンとして使い、択捉島はロシア企業がフリーゾーンとして使う。ロシアの企業と日本の企業が合弁企業をやるというのは賛成しない。それよりもむしろ日本企業もロシア企業も進出しその両方に対して両国の保有する特許を無償もしくは特恵的な条件でライセンスをする取り決めである。
では、この取り組みがうまくいくにはどうするべきか、それはお金である。私は日本政府がこの取り組みに4兆円くらいの資金を充てて、4兆円のうち2兆円はロシア政府が自由に使い、1兆円は国後島、択捉島の企業にロシアが出資し、もう1兆円は日本政府が日本の企業に融通することにすれば、ロシアの企業も日本の企業も北方二島に積極的に進出し、歯舞、色丹島は日本に帰ってくるというようになれば、実質的には四島すべての関係が日本は再構築でき、またこのフリーゾーンでできた製品がロシアと日本の経済活動に与える影響は投下した4兆円をはるかに超える非常に大きいものになり、Win-Winの関係になるのではないかということだ。
この問題を実現させるために考えなければならない問題はまだある。ロシアの気持ちの以外にこの枠組みをアメリカがどう考えるかが重要であろう。クリミア半島の問題でロシアに制裁を行うイニシアティブはアメリカがとっている。ロシアから石油を買わなくなったので、石油の値段が下がっている。ロシアが弱っている状況に対して日本がお金をロシアに渡すことに、アメリカは大きく反発するであろう。しかし、それは金額いくらくらいまで妥協できるのかということが問題になるであろう。北方領土を買うためにロシアにお金に渡すということをアメリカは認めないだろう。しかし、ロシアと日本が特許をベースにした新商品を開発するというプログラムをするということであれば、またそのプログラムにアメリカも何らかの形で参加できるのであれば、アメリカは協力的な態度か、最小限見て見ぬフリをしてくれるのではないか。
こういう枠組みのことを考え始めたら、歯舞諸島と色丹島が返ってくることよりも、残りの国後島と択捉島で行われる共同経済プログラムの方がはるかに大きいと思う。こういうことに日本政府がたとえ5兆円使ったとしても国民は納得するのではないか。また時の政府は戦後70年、沖縄返還に次ぐ、大きな政治的な達成を成し遂げたということに大きく評価するのではないか。9月2日からの東方経済フォーラムのプログラムをそういうことを考えながら読んでいくと、今回の私の私案は実現しそうな可能性があると思う。ソフトバンクの孫さんでもイギリスの企業に3.3兆円もつかっているのだから、安倍さんもロシアとのプロジェクトに4兆円くらい出して欲しいものだ。
#80 TOKYO 2020に向けて
2016-08-23オリンピックが終わった。オリンピックのまとめのテレビ番組がたくさんあって、それをたくさんみた。もちろんHDDレコーダーに録画されたものをみた。日本の若い世代がこんなにも力強く元気で、世界レベルのアスリートであるということに元気づけられたのは私だけではあるまい。2020年にはオリンピックが東京にやってくる。そのことを考えてみた。
日本は東京だけがバツグンの大都市である。日本人の東京のイメージはいくつかあって、まずは東京の東京というと山手線のなか。しかし、東京区内というと23区のこと。しかし、東京都内をこえて東京圏というとつまり、大ロンドンのような大東京とは、関東平野全部をいうのではないかと思っている。最近は乗らないけれど、関東平野の上をヘリコプターで飛んでみると、どこまでもどこまでも家が立っている。さすがに世界で一番大きな都市であるという実力を感じるのである。今からこの関東平野という膨大なキャパシティを持つ日本に2020年のオリンピックを目指して、莫大な投資が行われる。注目すべきことはオリンピック用に作られる各種の体育設備ではなくそのその設備を結ぶインフラではないだろうか。つまりオリンピックが行われたあとの交通インフラが整備された東京が2020年代の日本の大きな成長の舞台になるのは間違いないだろう。1964年のオリンピックのあとに、東京は進歩を遂げた。同じように2020年代の東京には、新しい世代の日本人と国際化された外国からの訪問者が溢れかえることになるのだろう。東京だけ不動産の高騰はつづくと思うし、ホテル業、飲食業は東京だけ元気が続くのであろう。
もう一つは京都。最近の京都は外国人の観光客の数が驚くほど増えている。不動産の値上がりは東京よりも激しい。京都の人はこれ以上はとても無理というが、買っているのは東京の会社ばかりだそうだ。オリンピックの効果は2020年を目指して京都に及んでいる。
名古屋はどうか。値上がりが一番遅れているのが名古屋圏である。商業ビルとホテルがどんどん建っている。
大阪はどうか。政治的に注目されている大阪であるが、USJだけが元気で、資本は東京からやってきてボロ儲けしているらしいが、その他の大阪経済は元気がない。当分横ばいなのであろう。
結論は、ビジネスの東京と観光の京都がこれからの日本の元気な街になり、あとの地方都市はよくても横ばいで2025年ぐらいまで続くのであろう。だから東京と京都の開発政策と地方の政令指定都市と小規模な地方都市の政策はそれぞれ違ったものにしなければならないのは明白である。一番住みやすいのは東京や京都でなく地方の小都市ではないだろうか。
#79 最近のテレビ、最近のインターネット
2016-08-17かなりの長い間、病院に入院していた。心臓の不具合と目の不具合を直してもらうためだった。両方とも手術は無事終わってこの度退院した。考えてみれば、クラシックカーのような60年ものの身体で、なおかつスペア部品がないのだから、メンテナンスは必ず必要だ。これからあちらこちらが故障し続けるのだろうかと、考えるとがっかりした。
入院中テレビをたっぷり観る時間があって最近のテレビに感じたことがある。ニュースは、ニュースとその解説をするニュースショーに別れる。ニュースショーは、ニュースが終わってから約1日くらいしてインターネットで調べて台本を書いてニュースショーがガンガンに騒ぎ始める。ニュースショーの内容はインターネットで調べることができる以上のことはないにもない。そこに信じられない、考えられない、許せない、を繰り返し発言をするコメンテーターが出現して、発言をする。これの繰り返しである。天皇陛下のお言葉や、SMAPの解散やオリンピックの金メダルなど大きなことが起こるたびに、テレビはどのように扱うのかと大体予想がつく。どうしてもみなければならない類の内容ではないので、仕事に戻るとテレビは観なくなった。しかし、1日中テレビの前にいるとどうしても電源をつけてテレビを観てしまう。ほとんどの視聴者はテレビを観なければならないと思って、テレビを観てしまうのだろう。全録のハードディスクレコーダーで全番組を録画してつまみ食いをするような見方をしているが驚いたことに会社に置いてある全録のハードディスクレコーダーは一度も観たことがない。つまり、会社の中で起こっていることの方がテレビよりも面白いということか。そういえば、ワンセグ機能のついた電話をずっと使っているが、テレビを観たのは数えるほどしかなかった。テレビはどんどん退廃に向かっているのではないか。
インターネットのウェブサイトは、自分が見ているものは自分が観ているものはほとんど見尽くしてしまったところがあって、最近はインターネットのウェブサイトでファイルを探してダウンロードしてプリントアウトして読んでいる。私にとってインターネットは電子本屋だ。インターネットと製本ができるレーザープリンが〜の組み合わせが私にとって本屋の役割を果たしてくれている。
インターネットSNSについては、facebookをやっている。しかしfacebookで情報の発信はほとんどやっていない。Twitterもやっているが、Twitterは自分のことを悪く言われたりするときに、訂正を求めて発信をすることきのみ使っている。聞けば、Twitterは大赤字だそうだ。そのうちなるなるだろう。なくなっても私は困らない。LINEは、やっていない。電話番号を抜かれるのはイヤだからだ。simejiもやっていない。入力したテキストを抜かれるのがイヤだからだ。SNSが出てきて人は人生で出会う人の数が1000倍くらい増えるという。それもいいのかもしれないが、私が値打ちを感じるのは生き別れになってしまった友人と再開することができるfacebookには感謝しているが、その他のSNSについては私は苦手である。しかし、Twitterの行き先やクラウドによるプライバシーの侵害などこの分野の未来は危険に満ちているのではないか。
#78 孫さんのARM買収について思うこと
2016-08-01久しぶりに「ああ、びっくりした」というようなことが起こった。ソフトバンクが3.3兆円でARMのデザイン会社を100%買収するというのだ。孫さんがどこに投資をしてもなにを買収しても、自分の専門外の世界であるので、何もいうことはなかったが今回のARMの買収は自分のライフワークの一つがマイクロプロセッサーを作るということなので、自分の専門内ということで、私の感想を述べたいと思う。
1番目。買収によってソフトバンクの株価は下がった。
世の中は、孫さんのいうような買収の糸を理解していないようだ。投資家は、ソフトバンクの株を売ったということである。株価は1日で1割近く下がった。それで止まっているようなので一安心である。
2番目。ARMの投資の回収は時間がかかりすぎるであろう。孫さんはIoTが未来だ、といっている。私も合意する。私が最近やっていることの半分以上は、IoTである。間違いなく未来はIoTである。しかし携帯電話がここまで来るのに20年かかっている。IoTが今の携帯電話のようになるのに、間違いなく20年はかかる。その時孫さんは80歳。20年後にしか答えが出ない投資は間違いではないのか。
3番目。単一企業の買収に社運をかけてはいけないのではないか。ソフトバンクの有利子負債は15兆円になるそうだ。ちょっと前まで10兆円だったのに。アメリカの携帯電話会社スプリントの買収に2兆円と債務引き受けに3兆円の計5兆円。今回のARMは手持ちの資金を使って足りない分はつなぎ資金でまかなうことであるが、社運をかけた買収ということがいわれている。ソフトバンクのような超大企業が社運をかけたギャンブルをしていいのか。社会的な責任もある。ソフトバンクはもはや社運をかける大博打を売ってはいけない会社になっているのではないか。
4番目。株式に世界的な不況がきて、ソフトバンクの株価が2分の1になれば…、2500円の株価になれば、株価が弱くなった企業の資金調達力は弱くなる。銀行もお金を貸してくれなくなる。直接金融、間接金融、両方からの道を閉ざされたソフトバンクは資金ショートを起こす。これはARMの責任ではなく、市場が変化するということを考慮しないミスである。こういうことを忘れてはならないのでないか。
それでは解決法はないのか。私の考える解決法はARMを売却することである。それどころか、ソフトバンク全部を売却することである。今のソフトバンクを買う財力があるのこの2つのオプションしかない。一つは中国だ。もう一つはインドである。中国の国営企業か、インドの国営企業にソフトバンクを売って、孫さんはウォーレン・バフェットのような投資家になる。そうなることが孫さんに残されたシナリオではないか。
この文章を書くにあたって1週間ぐらい考えた。マスコミのいろんな論調をしっかり読み込んだ。日本だけでなく海外のものも読んだ。海外の新聞や雑誌の論調は、ほとんどは悲観的で辛口なものが多かった。ところが、日本の新聞や週刊誌、日本のウェブは「孫さん万歳」という論調が多い。昔ソフトバンクのことをあんなにバカにしていたメディアやジャーナリストが、今ではソフトバンクのことをみんな褒めている。ソフトバンクの広告を出してもらっているのか。昔のソフトバンクを知らないのか。理由はわからないけれど、そういう記事にも歴史が評価を下すのであろう。私は自信を持ってこの文章を書いた。